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地下室ブログ

板橋にある地下スペース「アートスタジオDungeon」で開催する展覧会やイベントの情報を発信します。

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「蜘蛛の女王」鋭意制作中

8日から始まる戸野倉さんとアウスタさんのコラボレーション、制作は順調にいっている模様です。

アウスタさんが持参した素材だけでなく、先日は二人で日暮里の繊維街へ出かけて、あれこれ生地を調達してきたとのこと。

地下室に、繊維と針金と物語による幻妖なテクスチャーが織り上げられつつあります。

ファッションショーで使用する衣装もほぼできあがっているようで、6人のモデルさんによって披露されるそうです。


アウスタさんと戸野倉さん


制作中のアウスタさん


アウスタさんは11/10まで開催の「我孫子野外美術展」にも出品しています。


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蜘蛛の女王

11月の地下室は、ついに家主である戸野倉あゆみさんの登場です。
アイスランドのアーティスト、アウスタ・グドムンドス・ドッティルさんとのコラボレーションになります。



蜘蛛の女王 展
―3つのドレスの物語―
アウスタ・グドムンドス・ドッティル × 戸野倉あゆみ

2013年11月8日(金) - 17日(日)
12:00 - 19:00 ※金・土・日のみ Open

アウスタ・グドムンドス・ドッティルはアイスランドの首都レイキャビク在住のファッションデザイナーで、現在も独創的な毛糸のワンピースなどを制作販売しています。近年、その活動の場をファッションのみならず、現代アートの世界に広げ、精力的にインスタレーション作品を発表しています。
アウスタと私・戸野倉はアイスランドで知り合い、リトアニア、フランスのアート・シンポジウムに共に参加しました。寝食を共にする時間を重ねるうちに、私はアウスタとのコラボレーション展を考えるようになりました。
今回のアートスタジオDungeonでの展示は、私が3つのお話とボディを作り、アウスタがボディに布切れや糸を編み込み、2人でひとつの作品を制作するという試みです。
展示タイトルの「蜘蛛の女王」は、3つのお話のうちのひとつでもあり、また一方、糸を編んで作品を作るアウスタ、言葉を繋いでお話を作る戸野倉を象徴するものでもあります。


戸野倉さんによる制作プランのドローイング


【イベント】 
11月9日 18:00 -
●「ミニ・ファッションショー」
展示関連イベントとして、アウスタ・グドムンドス・ドッティルの地下室ミニ・ファッションショーを行ないます。アイスランドの名産品の筆頭はウールの毛糸です。その極上の毛糸で編んだ自作の個性的な服を披露します。アウスタ自身が今回持参する服に加え、日本の友人たちが所有する服を持ち寄った7着ほどの短いショーではありますが、アートスタジオDungeonの独特の空間での一風変わったショーをお楽しみください。

●「テイ・コバヤシ パフォーマンス」
テイ・コバヤシはアメリカ生まれ、長野在住のパフォーマンスアーティストです。
アウスタ、戸野倉と共にアートシンポジウムで交流を重ねた間柄で、今までのアウスタの作品、戸野倉の作品をよく知っています。今回は展示に合わせて、アウスタの作品の素材を取り入れ、束縛と開放をテーマにパフォーマンスを考えてくれました。ご期待下さい。





「根の国」展 トークイベント

22日に、出品作家が勢揃いしてトークイベントが行われました。
用意した席も足りなくなって立ち見が出るほど、多くの方にご来場頂きました。

まずかわきりに、江尻潔さんによる岩笛の演奏と詩の朗読。
佐渡島で拾ったという掌にすっぽり収まるほどの石には自然に穿たれた窪みがあり、そこを利用して、なんとも繊細で床しい音色がひとしきり奏でられ、そのあと、詩集『るゆいつわ』『虚光集』から一編ずつ詩が朗読されました。
読むというより吟じるといった方が近く、凛とした声が響きわたると、地下室が厳かな雰囲気に包まれました。

ついで、川島健二さんのお話。
寄稿してくれたテキストを敷衍するかたちで、神話における「根の国」について民俗学の知見を踏まえながらわかりやすく解説。師の谷川健一さんの仕事にも言及されるなど、お話は興趣が尽きず、個々の作家のことも知悉している川島さんだけに、この展覧会のコンセプトにさらなる奥行きを与えてくれました。


左が江尻さん 右が川島さん

そして、最後に9名の作家が一同に会して、各々の作品を解説してくれました。
いずれも自らの方法に自覚的な作家だけあって、あらためて話を伺うと腑に落ちることが多く、おかげでより作品へアプローチしやすくなったように思います。



この「根の国」展は、アートスタジオDungeonのかねてより念願の企画だったので、いいかたちで実現できたことは一際喜ばしく、ご来場くださった方々、そして過分な協力を賜った出品作家に、心よりお礼申し上げます。

スサノヲ展も今から楽しみです。



「根の国」展 作品紹介

今回の出品作をごく簡単ながらご紹介します。

いずれの作家も事前に地下室を下見した上で、根の国というタイトルにとらわれ過ぎず自由に制作していますが、どこかしら似た指向が感じられ、そこはかとない統一感を生み出しています。

江尻潔「かがかげ」
江尻さんは足利市立美術館の学芸員であり、『るゆいつわ』『虚光集』という詩集をもつ詩人でもあります。
ささやかな祭壇のように設けられたこの作品は、偏光ガラスを用いて合わせ鏡を作り出し、蠟燭の炎が無限に映り込む様をのぞきこめるようになっています。



川島健二「根の国を開く」
ブログの前記事で紹介した文章の直筆原稿をパネルにして展示しています。



川田夏子「坂のその先」
日本画家である川田さんの作品は今回唯一の平面ですが、支持体は天井から糸で吊り下げられ、インスタレーション的な展示になっています。
白麻紙に雲母によって引かれた線が、地上と根の国との垂直の関係を際立たせているかのようです。




黒須信雄「虚裔25に基づく解體と再生(蘇生)に於ける變相」
画家の黒須さんは最近木彫にも取り組んでおり、今回はその木彫をさらに展開させた作品。
地下室にもとから据え置かれていた重厚な金庫を展示場所に選び、最上段の木彫りの彫刻が、銅板や皮革や石膏へとトポロジカルに変換されています。




古西律「渚にて」
制作のたびに多様な名前を使い分けるアノニマスな作家の、古西律名義による作品です。
大雨が降ると水たまりができるこの地下室の特徴を活かして、波打ち際の風景を作り出し、先の震災を真正面から扱っています。



篠原誠司「遠野 - 土沢 - 平泉」「多々良を踏む」
篠原さんも足利市立美術館の学芸員であると同時に写真家でもあり、自家製の写真集が2冊出品されています。
ひとつは、この7月に東北を旅した際の写真をまとめたもので、もう一冊は、群馬の渡良瀬遊水地周辺を撮った写真を、一緒に歩いた川島健二さんの文章と組み合わせたもの。



タカユキオバナ「ちのうた」
オバナさんの最近の試みの多くがそうであるように、ワークショップとも言いうる参加型の作品です。
参加者は、神社の手水を写した写真と組み合わされた母音をひとつ選び、その水を小瓶に移しとって、壁に並べます。そうしてできあがった「うた」は、後日混ぜ合わされて各自に送り返されるそうです。
この秘儀的で晦渋な作品は、オバナさんの遠大なスケールを持った哲学によって裏打ちされています。




栃木美保「結芽Ⅱ」
卓上に様々な植物の種子が並べられ、来場者はその中から選んだ種を、和紙で作られた小さな鉢に植え、水をあげて持ち帰ります。
栃木さんは香りをモチーフとした作品も多く、今回も種の精油をブレンドした3種の香油の香りを楽しめるようになっています。




山田稔「オルフェの泥舟」
来場者は山田さんの自画像が印刷されたポストカードを好きなようにちぎって、蠅取り紙のように裏返しに張りめぐらされた壁のガムテープへ貼付けます。あらゆる形に切り取られた山田さんの断片が徐々に壁を埋めていきます。




※印のついた写真は、オバナさんの撮影です。

「根の国を開く」川島健二

群馬在住の民俗学者・川島健二さんが今回の展覧会のために寄稿してくれたテキストを掲載します。
つい先だって亡くなられた民俗学の泰斗である谷川健一さんは川島さんの師にあたり、その死が淡く重ねられた感慨の深い文章になっています。

川島さんには22日のトークイベントで、講演をしていただく予定です。



根の国を開く    川島健二


「常世」が現世から他界へのまなざしであるとすれば、「ニライカナイ」は他界から現世へのまなざしである。一方には求めて得られない翹望があり、他方には慈愛にみちた庇護の感情がある。
(谷川健一『常世論』 傍線川島)
 
 はじめに南島の洞窟(ガマ)が想起された。湿り気を帯びたよどんだ空気が呼び寄せたのかもしれない。そうなれば出雲の〈黄泉の坂、黄泉の穴〉猪目(イノメ)洞窟も、イザナミが葬られたという熊野の〈花の窟〉も、もう遠くはなかった。境界を示す言葉を名に持つ川(石神(シャクジ)井川)、そのほとりにある地下室は、時空をつきぬけて到来した穴の集積空間となった。
 根の国は、何よりも哭きいさちるスサノヲが切望した〈妣の国根の堅州国〉である。そしてその地の住人となったあとは、スサノヲがわが子のオホナムヂに数々の試練を与え、大国主命として転生させる死と再生の舞台である。出入口にあたるのは黄泉比良坂(ヨモツヒラサカ)、すなわちこの洞窟である。根の国は限りない大地の力と直接する。
 が、洞窟は海の他界への通路でもあった。沖縄のニライカナイ(海の彼方の楽土)のニは根であり、火や稲種さらに人々のイノチまでもたらされる根源的な場所を意味した。根の国が罪ケガレを受容するならば、ニライカナイも災いをなすモノ(たとえばズミ)を受け入れた。根の国とニライカナイ。この根源的な場所に集積された力。それに触れずして現世の存立は困難だろう。根の国を開き、他界と現世の交通路を普請(フシン)すること。それは新たなコスモロジーの創出であり、〈死者と生者の共同体〉の確かめでもある。死者は鎮魂を待つだけの存在ではなく、非力な生者が希求する尊い後見人ではなかろうか。
2013.9.4.記



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