折り返し地点の4日目。
今宵のリクエストは『少女蜜蜂』。5月末に当スタジオで開催された兵頭喜貴「板橋地下秘宝館」ゲスト公演でも上演された、筆者気に入りの作品のひとつである。
主人公はプールでの水難事故で愛娘を失った父親。娘はどこかで生きていると頑なに信じる父親はビラを配り、娘を探しに行くための素潜りの練習に励む毎日を送っている。そんなある日、同じように水の事故で息子カンパネルラを失った父親から、行方不明になった少女達の住む国があるとの情報を得る。彼はその晩、娘を連れ戻すために忌まわしい事故現場の区民プールに忍び込み…。
実際に起きた痛ましい事件から着想を得た作品であり、東京ディスティニーは残された父親の娘への愛情、悔恨、慟哭、狂気、怒り、自責の腐乱した渦を、「蜜蜂」「甘い香り」というフレーズへと収斂させていった。
瑣末ながら、ラストシーンでは、父親の住むアパートの管理人として筆者は名前を使用してもらうという栄光に浴した。妙に嬉しい。
今夜の日替わりゲストは、都内で精力的にライブ活動を行なっている「鼻ホームランの森」。
山下健太:ボーカル・ギター
関根俊明:カホーン
松岡仁美:ピアニカ
山本奈穂子:コーラス・タンバリン
スガワラカズノリ:ベース
“絶望的な大失恋をきっかけにゴミ捨て場で拾ったアコギで弾き語りを始めた”というボーカル・ギターの山下氏。そのせいだろうか、どこかメランコリックな演奏は郷愁を感じるのだが、では、過去に聞いた誰に、何に似ているかと思い起こそうとしても、思い当たるミュージシャンが出てこない。強いて言うなら、RCサクセションの忌野清志郎をもっと美しく透明にした感じだろうか。独特の気怠さは汗ばむ真夏の午睡にも似て、ある種の遊泳感が心地良い。
珍しく順調な時間配分で進んだこの日、東京ディスティニーのトリの作品は『サンタクロースVSグレムリン』。この作品も『少女蜜蜂』同様、5月末に上演された、筆者気に入りの1作である。
主人公は“サンタクロース養成学校”に通うサンタクロース候補生のルメルク。12月24日、この日はサンタクロース認定試験の最終科目、プレゼント配達実習の日である。準備にいそしむルメルクは子供たちに配るプレゼントの山の中に奇妙な生き物を見つけ、食べ物と水を与えてしまう。よもやその生き物が“グレムリン”だとは露にも思わずに…。
実はこの作品、続編があり、これがまた圧巻である。ぜひリクエストして欲しい。
(アートスタジオDungeon オーナー・戸野倉あゆみ)
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