11月に入った地下室は上着が必要ないくらいちょうどよい気温でしたが、怪談が始まったあたりからふいに寒さが増したように感じられ、思わず用意してあった電気ストーブのスイッチを入れたのは、単にたまたま開演時間が日暮れどきにあたっていたからだったのでしょうか。
今回、生野さんが選んだ作品はSF作家による2編で、どちらも子供のいる夫婦の不和が物語のモチーフになっています。
最初は小松左京の『まめつま』(1970)。「まめつま」という不思議な語感の魔物、日本家屋、赤ん坊、老婆といった道具立てが効果的に使われ、日本的な怪談としては正統ともいえるお話。
ついで、ブラッドベリの『十月のゲーム』(1948)は、夫の妄執が地下室で開かれたハロウィンパーティにとんでもない惨劇をもたらす、といった内容。
生野さんの朗読は各作品45分ほどになり、カンテラを手に持って、時には会場を歩きまわりながら語るというスタイルは、ほとんど一人芝居といってよいくらい。
地下室の闇にカンテラや蠟燭の灯りが揺らめくなかで聴く怪談は、独特な物恐ろしさを齎しました。
朗読後には、生野さんの奥様で英米文化を専門とする簑田知佐さんとの対談。
該博な知識で、文化的な背景などから作品を解説してくれたのですが、その深読みとも言い得る分析の後では、先ほど聞いたばかりのお話がまるで違ったものに見えてきました。
生野さんの怪談ライブはこの解説とセットになることで、より面白さが増すように思いました。
それと、言及しておかなくてはならないのは、入澤明夫さんのオカリナ。
各作品の枕に生野さんの詩の朗読があり、そこで奏でられる入澤さんのオカリナが素晴らしいものでした。
言葉の間を縫うような絶妙な即興演奏で、その音色は地下室の壁に反響して、パイプオルガンのようにも聞こえました。
ぜひ地下室でリサイタルなどやってもらいたいです。
生野さんにはこれからも地下室でなにか面白い企画を考えてもらう予定です。
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