「それぞれ自分が一番長く所有している物を持ち寄って展覧会をしよう」
という企画を考えたのは家主の戸野倉さんです。
遺跡発掘のバイトをしていた経験や、30年以上使っていたアイロンが壊れたことなどから思いついたそうで、話を聞いておもしろいと思い、さっそく自分の場合を考えてみました。
家の中を見まわし、引き出しをひっくり返し、あれでもないこれでもないと来し方を思いめぐらせながら一番古い物を探すというプロセスは存外楽しく、なかなか有意義な時間となりました。
揚句見つかったのは自分でも思いもよらぬ意外な物で、現時点で一番つき合いが長いのはコイツだったか、という驚きがありました。
人によっては、クッキーの空き缶に大切に仕舞っておいた物の場合もあるでしょうし、偶々捨てられずに持っていた物が、結果的に一番長く所有していたということもあるでしょう。
引っ越しを繰り返すうちに片っ端から昔の物を処分してしまい、せいぜい数年しか遡れない、という人だってありそうです。
ご高齢の人はやはり長く物を持っているのか。ティーンならばどうか。
日本に住む外国の人たちは自分のお国の物を持っているのか。
津波で家財をすべて流されてしまった人だっているのではないか。
興味はふくらみます。
このコンセプトの味噌は、物自体の古さではなく、所有している期間が一番長い、というところ。
その物は、その人にとって必然的でも、運命的でも、主体的に選んだのでもないかも知れませんが、他の多くの所有物にくらべて一番長く持っているという単なる事実があり、それを「関係の絶対性」と呼んでみてもいいですし、ただ「縁」と言ってみてもいい。
それを集めて展示することでなにが見えてくるのか、正直なところよくわかりません。
展示されたブツたちがなにかを饒舌に語ってくれるかも知れません。
会期中に所有者からその物の来歴を聞くのも一興で、引いてはそれは、その人の人生の一部を聞くことになるでしょう。
今のところ60名以上の参加を予定しています。
日本には古来より「作られて百年経った道具には魂が宿る」と考える愉快なアニミズム/フェティシズムがあり、このなんとも分類しがたい展覧会を『つくもがみ』展と名づけることにしました。
つくもがみ展
期間:平成27年3月3月27日(金)ー 4月5日(日)の金・土・日のみ
時間:12:00 ー 19:00
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