この展覧会は、「武器」という危ういテーマのもとに、生徒さんたちの作品を多角的に展示することで、いまの朝鮮学校のリアルが浮かび上がってくると同時に、崔誠圭というアーティストの仕事の本質が奈辺にあるのか、よくわかるものとなりました。
まず、「ヤローズ」と呼ばれる高校3年生が美術の授業で制作した武器を、インスタレーション風に展示。
やんちゃな生徒たちの興味を引くような課題を与えつつ、問題提起にもなるような崔先生の工夫が感じられます。そうして出来た作品はこうやってちゃんと展示したくなるのがわかるほど、魅力的な造形を有していました。
そのほかにも、彼らが戦中のプロパガンダ図像を素材に制作したコラージュを展示。
そして、美術部の中学1年生が作ったゴム鉄砲。
優れた意匠と実用性を兼ね備えていて、さすが美術部と納得させられる一品。
今回部員の作品はこれ一点のみでしたが、先月開催された文化祭では美術部を中心に「平和X」という展示をやっており、それを拝見したかぎりでも彼らの優秀さがわかります。
チョン・テオ『ゴム鉄砲』(2017年)
卒業生のパク・ステさんが崔先生と一緒に制作した、有刺鉄線と金網でできた不穏な花輪。
かつて丸木美術館にも展示されたことのある、なかなかの傑作です。
パク・ステ、チェ・ソンギュ『献花』(2014年)
これらは単に生徒たちが作ったというのみならず、教師でもある崔誠圭という作家が共に濃密に関わることで成立しているのだということを実感しました。
崔さんにとって、こうした活動もまた自らの重要な表現手段なのです。
最後にもう一点、崔さん自身の作品も展示されていました。
大量の消臭ビーズで作られた「ピースマーク」です。
会期中にビーズがどんどん小さくなっていき、最後に下に置かれた写真があらわれるようになっていましたが、残念ながら最終日までにそれがどんな写真なのか判別することはできませんでした。
平和の下にはなにがあったのでしょうか。
チェ・ソンギュ『Peace symbols』(2017年)
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