今回は還暦という節目でもあるため、竹輪乃木乃伊をご開帳するだけでなく、後藤さんのこれまでのお仕事を回顧するような展示をしたいと思い、無理を言ってプリントをどっさり出品してもらいました。
近年はどちらかというと映像やパフォーマンスに比重がおかれていたので、このたび初めて80年代後半から震災あたりまでの写真をまとまったかたちで目の当たりにして、そのクオリティに驚かされました。
色物扱いされがちなのかも知れませんが、こうした後藤さんの仕事をフォローしてない8、90年代の写真史は、時代を取りこぼしているとすら思われ、これだけの写真を展示できただけでも意義のある展覧会となりました。
ざっとご紹介します。
地下室に降りると、阿吽の仁王像のように出迎えてくれる大きな写真。
蝋細工のオブジェを咥えた傑作です。
特筆すべきは、インクジェットではあり得ないような銀塩プリントの美しさ。
竹輪を用いはじめた87年頃の作品。
メイプルソープの影響が色濃く見られ、まだ竹輪だけでなく野菜なども使っています。
後藤さんのスナップ写真なんて初めて拝見しました。
さすが須田一政門下。
中央2枚の母子像は80年代初頭、それ以外は6、7年前とのこと。
再び中判で撮り始めたスナップの試みは、震災で途絶したのでした。
多重露光したり、ネガを加工したりしたシリーズ。
素人目にも、後藤さんプリントうまいなあと感嘆することしきり。
リバーサルもたくさん出品。鳴門のシリーズなど。
還暦なので、幼少期から青年期のポートレートもあれこれ。
初参りの着物もきちんと取ってありました。
竹輪のミイラを30年も保管しているだけあって物持ちがよいですね。
1歳の時に撮ったのと同じ構図で50歳の時に再撮。手にはもちろん竹輪。
最近の原発をテーマにした「絶対安全」シリーズは今回展示しませんでしたが、そこに至る後藤さんのお仕事を概観できたように思います。
オウム真理教事件や9.11以降、宗教を安易に茶化すことが難しくなっていく中でも、後藤さんは一貫して宗教的なモチーフを扱ってきました。
そんな後藤さんが3.11以後の原発や放射能を取り巻く状況に、宗教と同じようないかがわしさを嗅ぎ取ったのは腑に落ちるところで、震災後、雨後の筍のように現れた社会派アーティストとは性根が違います。
これまでの軌跡をたどることで、後藤さんの絶妙なスタンスが垣間見えた展覧会でした。
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