この展覧会は、暗闇のなか壁を手で探りながら進み、奥まで到達したら極小に抑えられた手灯りを持ってほのかに浮かび上がる絵画作品を鑑賞しながら戻ってくる、というものでした。
コンクリ壁の冷ややかな感触、屋外から聞こえてくる物音、存在は認識できるけれど仔細に視ることのできない絵画、といったように、そこでは五感が増幅されるような体験を味わうことができました。
発想の元には善光寺などで行われている胎内廻りがあるのだと思いますが、そこには古川さんらしいテイストが加えられていました。
古川さんは自分に「サラリーマンから地下室の番人に身を落としたうらぶれた男」という役柄を設定し、いかにもそれらしい格好で毎日入口に立ち、来訪者に儀式のように鑑賞の作法を伝授するのです。
この芝居っ気はどうやら古川さんの特徴のようで、昨年参加した伊豆大島の野外展では、展示場所として与えられた廃校で自ら用務員に扮し、滞在中は掃除や草刈りに勤しんでいたという話を聞くと、さもありなんと思わせます。
光と闇、可視と不可視をモチーフにしたシリアスな作品(展示されていた絵画も自立した立派な作品でした)でありながら、このように諧謔で味付けせずにいられない古川さんの性分には、韜晦というより含羞といったものが感じられ、それが魅力のひとつとなっていました。
会期中にうかがったところでは、讃岐には他にも固有種のようなユニークなアーティストがたくさんいらっしゃるようで、いずれそんな方々に地下室でなにかやってもらいたいと思っております。
闇の中に展示されていたのはこんな絵画作品でした。
裏庭でつかまえた虫のがさごそ動く音をコンタクトマイクで拾って聴かせる古川さん。
玄関先にエフェクタを並べて、秋の夜長にこんなこともやっておりました。
営業中にも関わらず釣堀公園へ釣りに行ってしまった古川さん。
近所の子供たちにも大人気でした。
どことなく兄弟みたいだったので、元気いいぞうさんとツーショット。
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