この展覧会は参加作家である中島崇さんの企画によるものです。
たぶん地下室というロケーションからまず特殊照明家の市川平さんを思いつき、さらに市川さんの動く照明と組み合わせるべき作家を考えたのだと想像されるのですが、中島さんの炯眼はなによりそれぞれの資質を見極めたこの人選にあり、各作家の持ち味が見事に活かされた展覧会となりました。
アンビエントな展示の妙味を、写真や言葉でうまく伝えるのはむつかしいものの、一通りざっとご紹介しますと、
■市川平「ロウソク×プトレオマイオス号」各作品に照明装置を提供した市川さんの、これは単独の作品。
火のついた蠟燭をLEDの灯りで照らしてその影を壁面に映すといういたってシンプルな仕かけながら、物質ならざる炎という現象の影をかつてこれほどちゃんと見たことがなく、その幻のような幽さは得もいわれぬ神秘的なものでありました。
■竹中美幸「光. 闇. 芋.」竹中さんは色とりどりに感光させた35ミリフィルムを素材にしており、フィルムを透過した多彩な光が壁や天井に映し出されます。
タイトルにある「芋」は、シュヴァンクマイエルの『地下室の怪』という映画に由来するそうで、感光させるとき実際にフィルムの上にお芋を置いてみたりしたらしく、その痕跡はくっきりと残っています。
■千田泰広「Light print D」回転する照明の動きにつれて、床に散りばめられた鏡の破片が、その光を壁に反射させます。一見ランダムのようでいて、鏡の配置は周到に計算されており、CGと見紛うイメージが投影されます。
■千田泰広「0.04」天井から吊るされた装置の直径2ミリ程の穴から間歇的に水滴が垂れるようになっていて、その穴の内側から強烈な光を当てることで、水滴がレンズとなり、どこか宇宙的で不思議な像を床面に作り上げます。これは千田さんの単独の作品。
■中島崇「VALVE」幕のように一面に張り渡されたストレッチフィルムの前を、市川さんの照明が水平に往還することで、その影がカーテンを引いたようになめらかにスライドします。
中島さんはストレッチフィルムという素材を熟知しており、何層にも重ねることで、細密で存在感のある陰影を生み出しています。
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