あらゆるタイプの作品を投入してくる猥雑な賑やかさは、海さんの展覧会の特徴とも言え、それは先鋭的なメッセージを標榜した本展でも変わりありませんでした。
展示の中心となる立体作品は2点に絞られ、それぞれ「政治」と「大麻」というテーマを際立たせるシンボリックな機能を担っていました。
◾️Only 100 Years Historyこれは未来派のボッチョーニの有名な彫刻が元になっています。
日章旗や飛び出た腸といったわかりやすい記号が付加され、アプロプリエーションという用語などよりも端的にパロディと呼んだ方が似つかわしいかも知れません。
20世紀のファシズムと現代日本がオーバーラップして、危険な魅力を放っています。
◾️Flamingo(ボングを届けるナース)海さんが大麻に対して抱いている多幸的なイメージがこの立像に凝縮されているようです。
ボングとは大麻の吸引道具。台座の緑十字は大麻を示すマークで、米国などでは大麻を扱う薬局や施設に掲げられているとのこと。
モデルは奥さんでしょうと多くの人から指摘されても、作家は頑なに否定するのでした。
この2作は、具象彫刻の可能性、とりわけ人体像がいまも十二分にアクチュアルな問題を扱えるということを示したマスターピースと言えます。
◾️Slothテレビに代表されるマスメディアを批判した作品で、光るオブジェがマスというものの無気味さを表しているように見え、どこからともなく聞こえる虫の音が、本展のタイトル「Loud Majority」とも響き合っているようでした。
ほかにも、バカ殿や腰元たちがカルタ遊びに興じるビデオ作品
『原発かるた』や、角砂糖でできた
『Newさとちゃん』など、肌あいのまるで異なる作品が展示され、その振れ幅、ギャップがたいへん面白いところでした。
さらに、メッセージ性から遊離して、いい感じで力の抜けたドローイングが多数出品されており、これがなんとも不思議な味わいがあって、好評を博しておりました。
(Photo : 中野愛子)
PR